水柿大地
私は農山村で暮らしている中で、高齢者の方々が日々たくさんの仕事をこなしていることに驚きました。家周りや農地、山林、お墓の管理等々….自らのふるさとで暮らし続けていくための仕事は多いです。70代、80代、中には90歳を過ぎてそのような作業をされている人もいます。そういった方々からはたくましさを感じる一方で、高齢化や一人暮らし世帯の増加などで、作業が困難になってきている実態も目の当たりにしてきています。
そこで、それら暮らしの困りごとを、地域に根付こうとしている若者が引き受けていくことで、一つの稼ぎがうまれるのではないかと考えました。シルバー人材センターなどでもそのような取り組みはとっくの昔から行われていたため、少し趣向の違うものを、と考えついたものが「みんなの孫プロジェクト」です。
大きな特徴は、「話し相手になる」ということ。
高齢者の方、特に独居世帯の方には「話をしたい」というニーズが強くあることを様々な場面で体感してきました。そこで依頼主の方にはこちらから「一緒にお茶やご飯をとること」をお願いしています。積極的にコミュニケーションを取る時間を確保することで、「おじいちゃん・おばあちゃんと孫のような関係性」を築いていくことができ、「草刈りの合間にお風呂の温度の設定を変えてくれないか?」「ちょっとこの米を倉庫に動かしといてくれないか?」という、それ単体では普通は依頼をしないようなお願いも頼みやすい関係性が生まれていきます。細々としたニーズでも、草刈りのように対価をいただきやすい仕事と合わせて複合的に対応できるのです。
また「地域の伝統文化や技の継承」も大きな特徴の一つです。
日本の農山漁村で長年培われてきた伝統・文化、生活の知恵は、大きな大きな魅力です。いま、技や知恵を蓄えてきた方々から教えを請うことができるタイムリミットは迫ってきています。依頼主の方からお話を聞くことは、話がしたい欲求を充たすだけでなく、それらを引き継いでいくことにも繋がっていきます。
高齢化する地域社会の中で「若者の稼ぎをつくること」と「次世代に地域の魅力を残すこと」は並行して行っていかねばなりません。外に出ている孫にひとまず代わって、こういったことを意識し、取り組んでいるのが「みんなの孫プロジェクト」です。